サイバーパンク2077 50時間プレイした感想
サイバーパンク2077(スパイク・チュンソフト2020年12月10日発売)をハードモードで50時間ほどプレイ、終盤までストーリーを進めたので、感想をまとめておく。
(プレイ環境はPS4)
たびたびの発売が延期、発売後もセーブデータがクラッシュするという致命的なバグが見つかり開発元がダウンロード版の返金対応を取るなど、騒動を起こしたサイバーパンク2077。50時間プレイした感想としては、元も子もないが、フルプライスのゲームだけある完成度の高い作品だと感じた。
サイバーパンク2077 世界観、戦闘システムなどできはよい
とにかくゲームの世界観へのこだわりが強い。大本となったTRPGが80年代から90年代初頭にかけて発売されていたこともあってか、ウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』や『ブレードランナー』、日本の作品でいえば、AKIRAや士郎正宗作品など、当時のSF作品が下敷きになっていることがうかがい知れる。人体改造の技術が進み、インプラント術によって、体だけでなく、中身まで全て交換することが可能になった世界。巨悪として立ちふさがる巨大な日本企業。上流階級と下層階級の分断が進み、荒廃する街。郊外ではマッドマックスさながらの武装集団が待ち構えている。一方電脳空間には、精神のみの存在が、といった世界観をち密に描きこんでいる。その辺にある貼り紙、車で流れるラジオでかかるラップや電波な音楽とにかく、こまごました部分も徹底している。
1993年に発売された、サイバーパンク2.02.0の邦訳版などももとにしているためか、日本語ローカライズもおかしなところはなく、舞台を彩る声優陣も豪華。実はメタルギアシリーズでおなじみ小島監督が隠れているなど、イースターエッグも用意されており、かなり手が込んでいる。
舞台となるのは2077年の近未来。カリフォルニア自由州にある企業都市ナイトシティ。物語の中心を担う大企業アラサカを始めとした企業が集まる、シティセンター、低収入労働者が集まる工場地区ワトソン、歌舞伎町やニューヨークをほうふつとさせる繁華街ウエストブルック、中南米の繁華街をほうふつとさせるスラム街サントドミンゴ、最も凶悪とされるギャングヴゥードゥーボーイズの根城となっているパシフィカ、そして郊外に広がる荒野バッドランズの6つの地区に分かれている。このナイトシティでメインストーリーが展開していく。
ストーリー自体も悪くないのだが、このナイトシティをうろうろして、こまごまとした開発陣のこだわりを掘り下げていくのが楽しいゲームだと感じた。
メインストーリーに当たる、メインジョブの内容は短め。正直たんぱくに感じるところもある。だが、街の警官、マフィアから逃げそこなった若者、妻の裏切りを気にする飲み屋のバーテン、インプラント手術を重ね、狂っていくロックスター。夢破れて街をさるエンジニア、心が芽生えた自販機、など舞台となる街を彩る普通の人々の生き様にも光を照らすサイドジョブの豊富さは秀逸だった。やりこんでいると100時間でもプレイできてしまいそうだった。さすがウィッチャー3を手掛けた会社のソフトなだけはある。
ゲームはFalloutやSkyrimなどに近い、1人称のアクションRPG。刀や鈍器など近接武器で殴っても良し、体に移植した鉄拳やひじから飛び出るブレード使い身を隠しながら敵を排除するもよし、リボルバーやアサルトライフルで真っ向から打ち合うもよし、遠距離から狙撃するのもありと、遊びがいある。武器は基本的に現地調達。敵から奪い取るも、その辺に落ちているのを使うのも、クラフトして作るのもありだ。特に刀への並々ならぬこだわりが感じられた。かっこいいよね刀。
これ以外にもサイバーパンク2077のオリジナル要素を用意している。それがクイックハックだ。本作では敵の神経系やそこら中にあるカメラやタレットなどをハックすることで優位に立ち時にはそのまま敵を無力化することもできる。神経系を焼き切るもよし、カメラの視界をジャックして、敵の位置を探り戦略を立てるもよし、こちらもまた楽しみ方が豊富だった。
あくまで個人的な感想なのだが、私はFPSや1人称視点のアクションゲームは初心者だが、ハードモードでプレイしていて、プレイスキルが原因で詰むような印象は受けなかった。
レベルは50まで。1つレベルを上げるごとに肉体、反応、技術、知力、意志5つの能力値のどれか一つを挙げることができる。また各能力値にはスキル(パーク)が割り振られており、レベルを上げることでパークポイントを一つ、クイックハックや武器の使用、アイテムのクラフトなど該当するアクションを採ることでもパークを獲得することができる。
能力値は上限まで上げられるものは多くて三つ。ダークソウルシリーズなどのように、能力値を再度降りなおすこともできない(パークに関してはアイテムを使い獲得しなおすことができる)ため、いわゆるレベルを上げて物理で殴る、といったプレイスタイルはできない。肉体を高めて物理で殴るか、技術を高めて強い武器を作るか、などなど戦略が求められる。一部の能力値はストーリーを優位に進めるうえで約に立つ場合もある(上がっていなくて摘むことはない)ので注意が必要。やはりコアゲーマー向けといった印象だ。個人的にはゲームを手っ取り早く優位に進めたい場合には、肉体、技術に極振りし、後の能力値は好みに合わせてあげるのがよいと感じた。
ストーリーには気になる点も
とはいえ、バグを抜きにして気になる点があった。
ひとつは不親切であること。これは織り込み済みでプレイしろよ、という部分ではあるのだが。
メインジョブに関わるサイドジョブ(エンディングに関わるのでどちらかというと、プレイしない選択肢のあるメインジョブといった感じ)以外は、プレイヤー側がただ待っているだけでは、ほとんど情報が明示されない。街を探索しながら、とっかかりを見つけることになる。
これだけならいいのだが、基本的にほとんどのサイドジョブにはつながりがない。クリアすれば、それっきりで終わりである。一つ一つは感動的であったり、街の闇が垣間見えたりと、面白いのだが、やりっぱなしになっている感が否めなかった。
またプレイヤーが選ぶ、コーポ(企業の人間)ストリートキッド(マフィア)ノーマッド(荒野で自由気ままに暮らす)といった三つのライフプランもあってもなくても変わらないという印象を抱いた。
確かにライフプランごとに、序盤の展開が変わるし、中盤以降、選んだライフプランでしかプレイができないサイドジョブが出てくる、ストーリーを進めるさい、独自の選択肢が出てくる(別に本筋には何も変化がない)といった選択したライフプラン独自の要素はある。だが、それくらいのもので、あまり必要性が感じられなかった。
DLCも出るということなので、個人的にはもう少し掘り下げてもらいたい次第である。
その点で言うと、ストーリーも冒頭に書いたように大味だと感じた。ナイトシティの雰囲気をプレイヤーが楽しめるかどうかにかかっているところが大きいように思う。
またメインシナリオに関しても、説明不足の感が否めない。サイバーパンクの原作者であるマイク・ポンスミスシナリオに関わっているということで、原作にかなり忠実なのだろうが、専門用語や舞台設定など、フレーバーテキストはあるのだが、プレイヤーが意識的に町中で痕跡を探さなければわからず、ストーリーの内部ではっきりと明示されることはない。
重要な役割を果たすジョニーシルヴァーハンドにしても、サイバーパンク世界において、どれだけ重要な人物なのか、原作をプレイしていないといまいちつかみきれない。
あくまで個人的な話だが、キアヌリーブスが、ブラッドピットの役を代わりに演じている『ファイト・クラブ』みたいな印象を抱いてしまった。もちろんそれはそれで面白いのだが、完全に楽しむには原作の知識も必要だろうと思う。
また、PS4などコンシューマ版では、キャラメイクやロマンス(恋愛、というかセックス)など一部のシステムには規制が入ってしまい完全には楽しめない。キャラメイクではインプラントを利用して、女性にいちもつをつけたり、男性に乳房を付けたり見たいな遊びがPC版ではできるらしいのだが、それはなし。またロマンスもピロートークをしたら終わり、という感じ。こちらも仕方ない部分ではあるが残念である。
戦闘システムに関してもストーリーを進めていくと最終的には銃撃戦、あるいは刀や鈍器で殴り合うプレイスタイルを取らざるを得ない局面が増えてくる。縛りプレイ的な楽しさはあるのかもしれないが、正直なところ、あまりステルス、あるいはテックを利用した戦法を採ることができなかった。
バグはかなり多い PS4だと頻繁にブルースクリーンに
また本作ではバグが多数あることも報告されている。
致命的なものこそなかったが私もプレイ中、細かいものまで含めるとかなりの頻度で遭遇した。見えない壁に囲まれて動けなくなる。いきなり穴に落ちて死ぬ、ジョブが進まない、空中にういたまま死ぬ敵とか。ただ、これらはロードすることで基本的には解消できた。きつかったのがブルースクリーンだ。
ちょっと街を歩いているときであればいい。だが、おそらく処理の関係かボス戦の前後やストーリーのムービー中、戦闘の途中など、肝心な時で落ちるときが多く、うんざりしてしまった。
それ以外にも、ラグが出たり、キャラの挙動がおかしくなったり、激しい動きをする敵キャラクターやボスの動きが途切れ気味になってしまったりと、バグとは言えないものの、プレイに支障を感じるものもあった。正直なところPC版は別として、コンシューマー版はあまりお勧めできないという印象である。(PS5がどうなるのかはわかっていない)
正直返金対応をすると発表したのも当然といえる。
もちろん、一時期話題になっていたはてなブログの記事に書かれていたように、ゲームの世界観として、バグありきでもあながち悪くない部分も確かにある。味と言えば味なのだが、やはりプレイに支障がでるのはきつい。
今後のアップデートに期待したいところである。