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サイコゴアマンを見た

 新宿シネマートで公開中の映画、サイコ・ゴアマンを見た。80年代90年代の低予算特撮作品が好きだった少年が大人になり、当時やりたかったことをやりたい放題やり切った感じのあるすがすがしい作品だった。

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勝気な少女ミミ(8)は兄ルークと庭でクレイジーボールに興じていた。*1勝気なだけでなく極悪非道なミミはクレイジーボール対決に負けた兄ルークを罰ゲームとして庭に生き埋めにしようとする。

これから自分が生き埋めにされる穴を自分で掘る、兄ルーク。しばらく掘り進めていると、中心に赤黒く光り輝く宝石がはめ込まれた、謎の箱を掘り当てた。実はその箱には遥か数千年前、宇宙のすべてを破壊しつくそうとした”悪夢の公爵”と呼ばれる残虐な宇宙人が封じ込められていた。

箱に興味を持った、ミミは「イーニーミーニーマイニーモー」と言葉遊びをしながら箱をいじっていく。すると、宝石がぽこっと取れてしまう。実は、適当な言葉遊びが”悪夢の公爵”の封印を解く暗号だったのだ。

よみがえった”悪夢の公爵”は近くにあった廃工場に向かい、ホームレスを”黒魔術”や圧倒的な暴力で皆殺しにしてしまう。残虐な宇宙人によって地球は阿鼻叫喚の地獄絵図となるかと思いきや……。

ミミが手に入れた宝石は、残虐宇宙人を有無言わさず操ることができるものだった。廃工場に訪れたミミは散らばるホームレスの肉片は意に介さず、残虐宇宙人の圧倒的なパワーに目を輝かせる。

ミミは残虐宇宙人にサイコ・ゴアマンと名付け、どこへ行くにも従えていく。ミミは遊び相手になってくれたり、宝石の力を使えば、なんでも言うことを聞いてくれるサイコ・ゴアマンとの生活を満喫。一方、一時はミミを殺そうとするサイコ・ゴアマンだったが、自由奔放なミミに翻弄されてしまっていた。

そんなミミの元に、サイコ・ゴアマンから宝石奪還を命じられた彼の部下”暗黒の勇士”たちや残虐宇宙人の覚醒を察知した正義の宇宙怪人パンドラの魔の手が迫ろうとしする。

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といった感じのストーリー。ただし基本的にあまり意味はない。別に改心した残虐怪人とのハートフルストーリーが展開されるわけでも、なんでもない。過酷な環境で奴隷同然に過ごしていたサイコ・ゴアマンの人生に触れ、ミミが成長するわけでもない。

画面の中で繰り広げられるのは様々な特撮作品への愛に満ちたパロディ、ローテクだが手の込んだ、怪人たちとのゴアバトル、そしてお母さんが謎の液体を飲んで怪人に変身、怪人のパワーで友達が化け物に、といった小学生が授業中に自由帳に落書きしていたような内容だ。

やはり魅力はスティーブン・コスタンスキ監督自らも制作にあたった、手作りの怪人たち。主役のサイコゴアマンや敵役のパンドラのシンプルにかっこよさを追求した見た目もいいし、暗黒の勇士たちの死体満載酸性風呂 デストラッパーやサイコ・ゴアマンの魔術で目玉のついた巨大な脳みそのような化け物に変化させられてしまったミミの思い人アラスターくんのようなコミカルでかわいげのある化け物たち、どれも手が込んでいていい。(細かいキャラクターのバックボーンはパンフレットに書いてあるので、買うといい)

また、サイコ・ゴアマンすら霞むミミの残虐非道っぷりもよい。自らの兄を苛め抜き、時にはサイコ・ゴアマンの力を使い、殺そうとすらする。自分の望み通りにするために。思い人を化け物に変えてしまう。天上天下唯我独尊、キリストも神も正義もくそったれ、という突き抜けたクソガキっぷりだった。

合間合間に挟まれる、善良ながらも、事なかれ主義な兄ルークの情けない姿。従軍のあと腑抜けになりニート同然のようになりながらもプライドはいっちょ前にある父、そんな父に振り回され、疲れ果てている母の姿も妙にリアルでよかった。

大人が本気でふざけ切ったような痛快な映画で最後まで中だるみせず、ポンポンと続いていく良作である。

 

 

 

 

*1:合間合間に挟まれる謎のスポーツ。公式ホームページに解説がある。こちらも子供が一生けん命ふざけて考えたようでいい。

『サイコ・ゴアマン』オフィシャルサイト