生活

日々の生活のことを書きます

読書 村田らむ 『ホームレス消滅』 日々姿を消す、ホームレス、彼らは今後どこに行くのか

 

 

ホームレス消滅 (幻冬舎新書)

ホームレス消滅 (幻冬舎新書)

 

 

 フリーライターイラストレーターなどとして知られる村田らむ氏の最新作『ホームレス消滅』(幻冬舎新書)を読んだ。20年以上にわたって、ホームレス取材に携わった著者が改めて日本のホームレスの実態、そしてホームレス自身の高齢化、街や社会そのものの変化、様々な要因から姿を消しつつある彼らの今と今後を追った集大成ともいえる一冊。

 

 

 本書はホームレスがなぜホームレスになり、そしてどんな生活をしているのか。稼ぎ方から、暮らしぶり、そして「なんでロックバンドのTシャツを着ていることが多いの? 」といったちょっとした疑問に答える形でホームレスの実態を紹介していく。そしてホームレスやその予備軍が集まる”ドヤ街”の今昔、そして過去から現在に至るまで、どのような力学の元、ホームレスが排除されてきたのか、排除されたホームレスはどこへ行くのか、筆者自身のルポルタージュや様々な資料を参照しながら明らかにしていくという構成になっている。

 

本書のあとがきにて著者は

「ホームレスでいることは、よいことなのか悪いことなのか、はっきりはいえない。そしてはっきりいうべきだとも思わない。ただなんとなく、徹底的にホームレスを排除する国・社会はあまり幸せではないような気がするというのが僕の見解だ」

 と語る。

 この通り、本書は過度にホームレスを取り巻く社会情勢を非難するわけでもなく、 ホームレス事態を美化するでもなく、かといって彼らの存在を悪し様に言うわけでもなく、ホームレスを取り巻く現状を淡々と時にはユーモラスに綴っていく。

 

 個人的には、本書に登場する街から逃れ、公的扶助からも逃れ、河川敷で暮らすホームレスたちにあこがれてしまった。本書では彼らが河川敷を占有し、家を建て、農地を作り、自給自足をし、時にはペットを飼い、ささやかな幸せをかみしめるように生きている姿が描かれる。

 勿論公有地の占有は立派な違法行為だ、ぜひは問われてしかるべきだろう。本書を読めばわかるのだが、彼らには単純に望んでその暮らしをしているだけではないし、そこには、河川敷を占有するホームレスではない人間、半分グレーな人間たちの存在、ホームレスを取り巻くまた別の問題も潜んでいる。こうしたホームレスを取り巻く複層的な状況が垣間見られるのも本書の魅力だろう。

 単純に読み物としても面白い一冊である。また、参照されている資料もかなり充実しているため、ホームレス問題や貧困問題に興味のある方が入門の一つにとってみてもいいかもしれない。

 

終わり